デザインシステムを起点にしたオープンな組織文化づくり
Takramは、三菱電機株式会社のDX戦略を支える「Serendie Design System(セレンディデザインシステム)」のデザインと開発を手がけました。このプロジェクトは、デザインシステムの立ち上げに留まらず、オープンな組織文化をつくる第一歩となることをめざしたものです。
DXの加速、AIの浸透、既存の業界や地理的な枠組みを超えた競争など、さまざまな要因が絡み合い、ビジネスを取り巻く状況が目まぐるしく変化してしています。多くの企業がその渦中にあり、未来を見据えてどのような戦略を取るかを、いままさに求められています。
宇宙から家電まで幅広い事業領域と多様な事業フェーズを有する三菱電機株式会社(以下、三菱電機)は「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を打ち出し、その変革を加速させるためのDX基盤「Serendie(セレンディ)」をリリースしました。
Serendieは、データ分析基盤やWebAPI連携基盤など多様な事業をつなぐデジタル基盤や、社内外のコラボレーションを育む共創空間など、顧客の声やデータを取り入れながら、新しい価値を生み出すためのプラットフォームです。
0→1のデザインシステム
Takramは、このDX戦略を支えるデザインシステムのデザインから開発までを一気通貫で手がけました。本デザインシステムは、Serendieブランドをベースに設計しています。
一般的にデザインシステムは組織や事業の在り方に合わせて設計されるため、今回は広い事業領域と多様な事業フェーズをもつ三菱電機に適応が求められました。これは国内外のデザインシステムの事例のなかでも求められる適応性がかなり高い部類に入ります。
デザインシステムの立ち上げは、デザイン原則など抽象的な要素から着手する場合もありますが、今回はエンジニア主導のモノづくり文化からの変革をめざす三菱電機の組織文化を踏まえて、UIコンポーネントなど具体性の高い要素からカバーし、プロトタイピングの高速化や車輪の再発明を防ぐなど、効果を実感しやすいところからスタートしました。
結果として、テーミングやマルチデバイス対応を考慮したデザイントークン、汎用的なUIコンポーネント群とそのJavaScript実装、300を超えるオリジナルアイコンが生まれました。
これらは「Figma API」や「Variables」「Code Connect」などFigmaが備える機能をフル活用してつくられ、デザイントークンを実装側とデザイン側で共有するなど、Single Source of Truthを突き詰めたものとなっています。これは、「デザイン×開発」がなせるTakramならではのアウトプットといえます。
外を向くことで、内を変える
今回のプロジェクトで検討してきたことは、成果物だけでなくその設計思想を記したドキュメントを含めて、ほぼすべて社外に公開しています。IT・テック系企業は社外公開の事例も多いですが、国内において三菱電機のような企業体では、ほぼ例がありません。
なぜ公開に踏み切ったのか。ひとつは社内外の誰もがアクセシブルなデザインシステムにするために、使いたいときにすぐ使える状態をめざしたことにあります。三菱電機ほどの企業規模となると、部門が違えばほぼ別の組織といってもいいでしょう。加えてソフトウェア開発においては関係会社や社外との協業で進められるケースも多くあります。
これらの背景のもと、社内外のコラボレーションをより促したいという想いや、協力会社も自由に使えたほうが開発の効率化など実利も大きいということを勘案して、社外公開に至りました。
ドキュメントサイト: Serendie Design System
Figma Community: Serendie UI Kit
全国に拠点が点在し、3万人超の社員がさまざまな事業に関わる三菱電機では、そのすべてに対してUI/UXデザイナーの手が行き届くわけではない現実があります。そうした状況下で、エンジニア主導であっても一定のデザイン品質が担保できることが重要になります。
また、デジタルプロダクト領域に求められる専門性の高さを鑑みて、UIコンポーネントやデザイントークンといったパーツの定義だけでなく、それらを組み合わせた画面サンプル(作例)を用意し、コピー&ペーストで使い始められるようにしています。
これらの工夫を重ねた結果、社内説明会には300人近い参加者が集まるなど、さまざまな事業部、関連会社から引き合いが強まっています。
デザインシステム運用チームの立ち上げ・支援
予算や体制の問題から、つくって終わりになることも多いデザインシステムですが、国外を中心に「つくる」から「育てる」へとトレンドは移りつつあります。
そうした“育てるデザインシステム”を視野に入れ、プロジェクト初期から運用チームのリーダー (インハウスデザイナー) を置き、組織文化を踏まえて運用モデルやワークフローを検討するなど三菱電機とTakramはワンチームとして密に連携してきました。
Takramはデザインシステムをつくるだけでなく、組織に根づかせるところも伴走し、今後も社内外にデザインシステム・コミュニティを育てていく意識で活動していく予定です。
Project Information
- Client: Mitsubishi Electric Corporation
- Expertise: Digital
- Year: 2024
Project Team
- Project Direction: Takaya Deguchi
- Research & Strategy: Takaya Deguchi
- Software Engineering: Takeshi Nagayama (float)Takaya DeguchiYahiro NakamotoKenshiro Fujii (CLAN)
- UI Design: Terushige EnatsuTakaya DeguchiYahiro Nakamoto
- Web Design & Illustration: Suika YamadaTerushige Enatsu
- Iconography: Kosuke FutsukaichiSuika Yamada
- Design System Advisory: Ryo Fukushima (SmartBank)