Louis Sullivanギャラリーでの未来を考える展覧会
背景
「Shenu」 の世界巡回展示
プラットフォーム
ムン・ギョンウォンとチョン・ジュンホによる映像作品、El Fin del Mundoは、絶滅の危機に瀕した激動の世界を描いたものです。人類繁栄の影で起きた自然の反動は、海水面の上昇、有害物質の流出などの結果をもたらし、地球は荒廃しました。海水面は、世界で最も高い山々や高層ビルが島々と化すほどまで上昇します。これが新たなプラットフォーム構築の出発点となりました。
文明が滅んだ世界では、従来の勢力図、社会経済機構、芸術や文化はもはや存在しません。美術館やギャラリーは水没し見えなくなります。この新しい世界では、生存することのみが他の何物にも勝るプライオリティになります。そのような状況下、残された人々が集い再構築するために文明が再構成されなければなりません。この悲惨でおよそ望みのない空想条件は、つまり先入観や偏見が消えたとき、アート、デザイン、文化、そして人生観を構成するものは何なのかを再評価する機会になりました。
新たな世界秩序の構築においては、座標を構成することが最も重要なタスクとなります。座標は、個々の有形物を繋げるものとして、そして世界を理解するにあたって非常に影響と変化を及ぼすことから、文明の構成において基礎的な概念です。それは、自然界で人類がどこに位置するかの枠組みをも与えるものです。
何世紀にもわたって、特に西洋はデカルト的なシステムの上に構成されてきました。ルネ・デカルトの座標概念はあらゆるものをグリッド上に置くことができるものです。しかし、デカルトの直交格子が地球に投影されたとき、不均衡な幾何学的表面分布が現れるのです。このような不均等性が、バックミンスター・フラーによって幾何学的分布を均等に投影して、歪みを最小化する20面体型が展開されるダイマクション地図と測地線型へのきっかけとなりました。この延長線上で考えてみると、このユートピア的メカニズムは上-下、北-南という二分法の中に埋め込まれた層的勢力図を不安定化することを示唆しています。しかし、デカルトにとってそうであったように、フラーの幾何学的座標システムによる世界のとらえ方は、様々な政治的モチベーションを前提とし、ユニバーサルな秩序を押し付けているともいえるでしょう。
ムンとチョンによる仮想未来では、画一的でユニバーサルな秩序は不可能なだけではなく、不必要なのです。脆弱な人類が住まう島々という断片的なプラットフォームでは、デカルト的絶対主義的な座標に取って代わって、アインシュタインの相対性理論的なフィールドの座標が必要ではないかという問いから始まりました。
建築家ルイス・サリヴァンによるモダニスト・グリッドの代表的 「シカゴ・フレーム」 で構成されている本展の空間にフラーのパターンを重ね合わせると、 相関的な変質が起こることが想像できます。六角形グリッドは、来場者の動線、情報の方向性、密度、循環、そして作品やプログラムのレイアウトなどの複数の関係性によって変形され、異なる座標へと変容します。展示空間は、デカルトとフラーによる構想では欠けていた別質のコーディネーションを試みており、ムンとチョンのNews from Nowhereによって創発された、巨大な 「科学的好奇心のキャビネット」の世界なのです。
Project Information
- Expertise: Spatial
- Year: 2013
Project Team
- Project Direction: Kaz Yoneda (ex-Takram)
- Architectural Design: Kaz Yoneda (ex-Takram)
- Art Direction: Moon KyungwonJeon Joonho
- Special Thanks: Generous support for the artists has been provided by Hyundai Motor Company, LB Investment, and Nefs Co. Ltd., along with Asiana Airlines in cooperation with GALLERY HYUNDAI, Seoul. Special thanks is also extended to the Illinois Arts Council, a state agency, for their support of the exhibition.
Takram would like to thank Mary Jane Jacobs, Executive Director, and the dedicated members of Sullivan Galleries, The School of the Art Institute of Chicago, for their countless hours, making this exhibition space design possible and executing Takram’s design to its fullest extent.
Also, many thanks to Kris Budelis and Hiroki Sato for their assistance as interns.