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21_21 DESIGN SIGHTのための超撥水加工をもちいた作品

超撥水加工を施された12枚の紙皿その上で転がる水滴ありふれた存在であるはずの水は紙皿の上でまるで命を得たかのように思いもよらない動きを見せます時には尾を振りながら歩く不思議な動物のようにまた時には分裂を繰り返すアメーバのようにまた時にはせわしなく競技場を転がるサッカーボールのように

ふるまいはその語のなかにbehavior と舞danceということばを含んでいますこれは社会生活を営む上での行動遊び心のあるうごきといった両面を表しています本作品を通じてTakramは水の貴重さ純粋さとこのようなふるまいという言葉の持つ二面性をそれぞれ表現しています水滴は紙皿の上に辿り着いた瞬間新しい生命を授かり自由自在に転がりながら私たちを楽しませてくれます

涙といった形で日常生活のありとあらゆる場面に存在する水ふるまいと触れ合うことを通して多くの人が水の新たな側面や意味また普段とは異なる解釈をの心に浮かべることができればーTakramはそのように考えています

構成

筐体は下から順に土台のコンクリート金属製の支柱木の器そして皿本体から構成されています地面に接しているコンクリート部分の高さは300mmこの土台は小さなこどもが登るための踏み台としても機能します土台の上からは900mmの金属製の支柱がのびています太さは5mmほどでしなやかに傾けることでお皿全体の角度を変え水滴の動きを操ることができます本体は実は使い捨ての紙皿を素材として用いていますが耐久性を高めるため木の器によりお皿全体の構造を補強していますまたこの重さが振幅運動に惰性を与えています

お皿を自由に持ち運べる形にせず敢えて土台に固定させたのにはある程度の公共性を持たせる意図がありますほかの人が遊んでいるときも横からのぞき見て一緒に楽しむことができる仕組みです壁には子どもが実際に土台の上に乗りながらお皿で遊んでいる様子が描いてあります佐藤卓氏によるデザインのこのシルエットは作品の使い方を明確に表しています

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テクノロジー

本作品はお皿の上を動き回る水の面白さを際立たせるため水をはじく超撥水加工という技術を用いています表面に微粒子を塗布することで水滴を立ち上がらせることができ水滴はお皿の上を滑るように動き回りますスキーウェアに吹き付ける撥水スプレーの特に強力な素材を表面に塗布しているようなイメージですこのような加工が水本来が持つ凝縮力表面張力を最大限に引き出しています
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コンセプト

12枚のお皿は水のための遊び場ステージです着目すべきは一つひとつのお皿自体ではなくそれが際立たせる水滴の表情ですこの作品は人が触れることによって初めて意味を持つものですそれぞれのお皿の上には異なったデザインが施されています抽象的で幾何学的な模様から具体的なモチーフを象ったものまで そして非常に大きなスケールを思わせる形状からミクロの世界を彷彿とさせるものまで様々なステージの上で同じ一粒の水滴が全く異なる振る舞い場面躍動感を映し出すことは多くの人の目に新鮮に映るでしょう水はとりどりのお皿の上を滑りながら時には尾を振りながら歩く動物のようにまたは細かく振動するスピーカーのようにまた分裂するアメーバのように多種多様に振る舞います自在に姿や動きを変える水滴はまるでステージの上で自由にダンスを演じるこどものようです

一枚のお皿を作るため最高25程度の作業工程下地処理撥水処理部品の造形塗料の塗布印刷転写コーティングヤスリがけなどを踏み水の動きを最も美しく際立たせるステージ水本来の魅力を引き出すステージを完成させました海や雨粒水道水や涙まで常に我々の周りを取り囲んでいる-私たちはそれを普段から身近にありありふれたものだと思いがちです来場者の方々にはこの作品の体験を通して偏在する水の不思議さ有り難さを改めて見つめ直すきっかけにしていただければ幸いです

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背景

佐藤卓氏と竹村真一氏の監督のもとクリエイティブチームとともにこの展示会の準備を進めてきました展示会開始の半年ほど前に水と触れ合う遊びにはどのようなものがあるかを皆さんに紹介するためワークショップを催しましたそのときお見せした中の一案が超撥水皿でしたそこで佐藤氏がお皿本体に加え土台と細い支柱を含めた構成を提案されました最終的には土台部分のデザイン壁のグラフィックは佐藤さんが担当されそれぞれのお皿のデザインを含む支柱より上の部分はTakramが担当しました
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舞台裏

半年の開発期間のなかで裕に300を超える試作品を製作しましたが会場に展示されている12枚のお皿はその中から丹念に検討した選りすぐりのものです水の特徴的な動き・振る舞いを引き出すのに適した造形とはどのようなものかその問いに答えるため1mm以下の単位で寸法を調整しながらバリエーションを作ったり同じ形状を異なる素材で作り比較するなどしながら最適な表現形状サイズを吟味しましたそしてそのような一つひとつの気が遠くなるような試作作業自体が普段見慣れているはずの水の美しさや面白さを再発見するための学び・遊びのプロセスでもありました皆様にも同様にこの作品を体験することが身の回りに偏在する水の不思議さありがたさなどについて再考するきっかけになればと思います
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Project Information

Project Team

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Kotaro Watanabe
Context Designer, Project Director
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Kinya Tagawa
Design Engineer, Project Director

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